ウィーン版エリザベート@梅田芸術劇場

4月は小笠原旅行もあるので遠征はやめとこうかとも思ったんですが、やはりウィーンまで行くより安いわ、と楽日間近にカケコミで見てきました。


やはりウィーン版演出いいですね! 見に行った甲斐がありました。噂どおり美術と演出がすばらしいです。全体的に日本版よりクールでドライ、現代的な印象。美術が観覧車だったりゴーカートだったりネオンサイン色の照明もあったりして、現代的な演出をしたオペラっぽい印象があります。字幕の訳詞もやはり東宝・宝塚版とはだいぶ印象が違います。政治的な背景も色濃く、シシィの葛藤や苦悩も濃度が濃いというか。精神病院やコルフ島のシーンなんか、特に歌詞の印象が違いました。
なんつってもキャストの風貌がちゃんとあちらの人というのがイイ(当たり前なんだけど)。1幕ラストに鏡の中に浮かぶエリザベートの姿が「あの肖像画」そのまんまなのには思わず拍手。あ、日本版でもそのつもりでやってたのかな、あの衣裳は。今まで死ぬほど見たにもかかわらず気づかなかったもんな。


トートの存在も、いい意味で日本版より薄め。あんまり人間くさくないので、どうとでも好きなように解釈できるような演出です。「トート=死=束縛からの解放」というだけでなく、エリザベートの抱える内面の葛藤や矛盾そのものを表してるようにも見えたり。なので、ルドルフの死のあとエリザベートを突き放すシーンなんかも納得しやすいというか、自然な流れとして見られますね。日本版だと突然のツンデレぶりに思わずツッコミいれたくなるんですが。


歌詞に乗せる音数の問題もあるにせよ、宝塚版・東宝版はやはり日本人向けにだいぶ「わかりやすく」しちゃったんだなぁと。美術もわかりやすいゴシック様式にしちゃって、テーマも「エリザベートと黄泉の皇帝の恋愛」の少女漫画的要素を強くしてしまった、と。エリザベートとゾフィの関係も、日本版だと単なる嫁姑問題みたいに見えてしまうけど、ウィーン版を見るともっと政治ゲーム的色合いが強い印象が。エリザベートの性格も、ウィーン版のほうがもっとエゴイスティックに見えるし。日本版のほうが感情移入しやすくややマイルドになってるなぁ、と。


そして何より、ウイーン版に比べると宝塚版も東宝版も、トートとエリザベートのシーンがなんともウエットでねちっこい。演出のタメや間合いが全然違うんですね。女子にとっての「萌えポイント」が日本版はかなり多いというか。前からこの作品は「女子ウケを狙ったあざとい演出」とは思っていたんですが、ウィーン版のあっさり感と比べてその違いを再認識。エリザベートに萌えを求めてる人にとっては、ウィーン版は物足りないんじゃないかと思ったり。


ただまあ確かにタカラヅカの観客としてはウィーン版みたいな複雑なテーマで見せられても困っちゃうので、宝塚版の演出に対しては「さすが小池修一郎」と拍手したい気分ではあるのですが。タカラヅカファン的にはやはりトップさんのカッコよさと萌えツボは欠かせないわけで。
一方で、イチ"演劇ファン”の視点としては、東宝版に対して「なんて改悪をしてくれたんだ小池修一郎」と罵倒したい気分でいっぱいになってみたり。「このまま輸入してくれればよかったのに!!!」なんて気分になりましたよ。まあ、あれはあれで別の意味で「ツッコミどころ満載で笑いの止まらないステキな作品」ではありましたけれども……。


感想まとめ
・ウィーン版は宝塚・東宝版より歴史背景や心理描写、物語の深みが5割増。
・ウィーン版は宝塚・東宝版より萌え要素が5割減。