TOMMY THE WHO’S「トミー」@日生劇場
- 演出:いのうえひでのり
- 出演:中川晃教 / 高岡早紀 / パク・トンハ / ソムン・タク / ROLLY / 右近健一 / 村木よし子 / 斉藤レイ / 他
- 訳詞:湯川れい子 / 右近健一
- 翻訳:薛 珠麗
- 振付:川崎悦子
- http://blog.eplus.co.jp/tommy/
幕があいて2ステージ目。平日マチネでいわゆる「2オチ」の危険性がある公演のせいかやや客入り悪く3〜4割くらいは空席。新感線ファンは「朧〜」に金つぎこみすぎてこっちには来てないんだろうか。
うーん、しかし私はたぶんこの「TOMMY」って作品自体が肌にあわないのかなぁ、なんて思いつつ。映画版もざっとDVDで観たけど「正直わけわからん」と集中力とぎれまくりでストーリーすら追えない有様だったし。去年の来日版も観てないし。
客観的にいただけないと思ったのは音響のマズさ。下手ブロックのスピーカー前だったせいかもしれないけど、とにかく歌詞が聞き取れない。比較的声の通りのいいキャストの歌詞はほどほど聞こえたけれど、ヒドいキャストになるとまったく聞き取れなくてイライラ。
あと、LEDを使った背景はどうにもいただけない。前半のダイジェスト版ストーリーをちゃんと客にわかるように伝えるためにはある程度の視覚的な説明が必要なのはわかるけど、CGでゴリゴリ動く背景とか使われると、「舞台でやる必要ないじゃん」とか思ってしまう。アナログな装置を想像力で補うのが演劇の魅力なんじゃないのか。とか。メタルマクベスの時程度の使い方ならいいと思うけど……。
それから微妙だったのは「主人公のトミー(中川)」「子役のトミー」「人形のトミー」の3つの使い方。それぞれの象徴するものがはっきりせず、場面ごとに適当に雰囲気で使ってるような気がして。なんかもうちょっとそれぞれに意味を与えてくれたらいいのになぁ(心象の表現は生身、とか、心を閉ざしてる状態が人形、とか)、と思ったりしつつ。
衣装もなんか中途半端な気がするんだよなー、メイン以外の役者の衣装が適当というか、微妙にセンスがいまいち、な気がした。衣装が記号として表す意味を軽視してる気がするんだよなぁ。もういっそサイケ系で統一するとかしてくれりゃいいのに。両親のキャラもあの衣装では伝わりづらい。「なんかちょっと上品な上流社会の両親」に見えてしまうから、子供をダシに金儲け、的ないやらしさがあまりないし。
演出も含めて、もっとトゥーマッチでいいような気がするんだけど。そんなこんなでどうにも冒頭乗り切れず。いのうえひでのり演出だと知らずに観ていたら、「ダメな翻訳ミュージカル」の典型を観てる気分になったんじゃないだろうか。1幕後半のAcid Queenやピンボールの魔術師あたりでようやく落ち着いて観られるようになったけど。でもピンボールの魔術師も「ボールを客席に飛ばして客席中をピンボールマシンにします!」と宣言したわりにはたいした数のボールじゃないからなんだか間抜けな雰囲気。もっと数とばせないものか。でなければ、舞台上だけとばしといたほうが空間が埋まると思うんだけど。
まあ、中川くんでTOMMYをやりたいというのはわかる気がした。彼はああいう不遇な天才役が似合うよなぁ。それにしても新感線以外の舞台で観る右近さんはどうしてあんなに違和感があるのか。観ててなにか落ち着かないんだよなぁ。なんでだろう。