中村勘三郎襲名披露四月大歌舞伎(夜の部)


「毛抜」はほぼ一年ぶりに歌舞伎座復帰の團十郎さんが主演。一月演舞場でも元気な姿は観ていたけど、歌舞伎座でみると改めて「ああ、回復してよかったねぇ」という気になってしまう。元気そうで何より。この演目はじめてみたのだけど、團十郎さん演じる粂寺弾正(男)が勘太郎くん演じる民部弟秀太郎(男)にねっとり絡みつきながら口説こうとする場面があり、「こんなものを真っ昼間の銀座で観ていていいのか」と思ってしまった。18禁! 18禁!

「口上」ではようやく復帰した七之助くんの姿が。具体的に事件のことには触れなかったけど、この口上の席に列座させてもらえることに対して、感謝と恐縮の気持ちでいっぱいになってるようだった。かなり緊張してるように見えたしなぁ。たとえ1ヶ月とはいえ舞台に立てなかったのは辛かったんだろうな、本来なら自分の役を他の誰かがやってるという状況は、役者にとって相当こたえる状況だろうし。口上の時は拍手と同時に大向こうから「頑張れ!」の声も飛んだりして、全体的に「厳しくも暖かく応援する」といった雰囲気に思えた。

「籠釣瓶花街酔醒」、前に見たときは吉右衛門雀右衛門だったなぁ。今回は勘三郎玉三郎。玉様の美しさに勘九郎さんが惚けちゃう、というのは先月の「鰯賣恋曳網」も今月の「籠釣瓶」もそうで、そのたびに勘九郎さんのリアクションに大笑いしてたわけなんだけれども。今回花道横の後ろの方の席でみていたのだけど、まぁ玉三郎さんの八ツ橋のキレイなことったら! いやー花道の七三で微笑んでからこちらにむかって歩いてくる玉様をみたときには私も思わず口が半開きになりましたとも。前に友人が花横で見ていたときに揚げ幕から玉様が出てきた瞬間思わず「変な声が漏れた」とか言ってて笑っちゃったのだけど、いや、今ならその気持ちも解る。ここんとこ三階席からしか見てなかったからそこまで撃ち抜かれることはなかったのだけど、間近で見る玉様の美しさときたらいやーハンパないわ……。いやもう真剣に口がポカーンとなってしまって(あわてて閉じたけど)、それは周りのお客さんも同様だったようで。玉様がひっこんでしばらくしてから隣のお嬢さんたちがやっと正気を取り戻したように胸をさすったりしながら「すごいねー……」「うん……」と感極まったように話していたのが可笑しくも同感だった。
そして浪人・繁山栄之丞の仁左衛門さんも色っぽくて素敵ー。まぁ、たしかにあばた面の次郎左衛門よりは断然こっちを選ぶよなぁ、どんなにダメ男でも「俺とどっちを取るんだ」といわれたら逆らえないわー。迷わずこっち選ぶわー。などと思ってしまう。ああ、眼福……。