「お父さんの恋」@PARCO劇場

ひとことでいうなら「あざとくも手堅い作品」、そんな印象。中谷まゆみ×板垣恭一コンビの作品は毎回そんな感じでギリギリでいやらしさを感じそうなあざとさなんだけど、そうはいいつつ「ま、いっか」と毎回泣いてしまう。今回もそんな感じ。

以下、ネタばれあるので注意

植物人間状態で意識のない父親とそれを世話する介護士の娘だけが暮らす家。母親の七回忌で集まってくる家族……と、劇構造としては定番中の定番。金持ちの旦那に嫁ぎつつ何かに苛立ちを覚え不倫中の長女、ベンチャー企業の社長となり結婚する暇もなく働く負け犬な次女、ニートな弟、幼なじみの近所の医者、とかそんな感じの設定。長女はともかく、残り二人が負け犬とニートってところが、なんかまぁいかにも現代社会を記号に落とし込んだような設定でちょっと鼻についたりはする。が、新選組!で山南さん=堺雅人のファンになって見にきた人の期待をまるっと裏切って、「ヤル気のないダメ男」にしちゃったところには内心でちょっぴり拍手。


全体的にちょっと冗長な感じはするのでもうちょっとコンパクトにてきぱき展開してくんないかなーと思ったり。それに、30を過ぎた人間なら誰でもどこかで思い当たる節がありそうなエピソードの数々に、あざといなぁと気付きつつもまんまと刺さって軽く泣いてしまう。そろそろ親の世話とか余命とか考えちゃう年の人間ならついつい考えさせられちゃうもんなぁ。