こまつ座「私は誰でしょう」

誰もがラジオを聴いていた。戦時中は「大本営発表」、8月15日には「玉音放送」。敗戦。東京放送会館は、建物の上半分を占領軍・CIE(民間情報教育局) に接収されるが、ラジオの声は、焦土のすみずみにまでこだました。「復員だより」「街頭にて」「のど自慢」、そして「尋ね人」。日本は大きく変わろうとしていた。「公職追放」「財閥解体」「新憲法」「教育改革」「東京裁判」「労働争議」・・・・・・。
 これは、戦後のラジオ放送にひたむきに取り組んだ放送職員たちと、 日系二世の軍人と、そして「自分がだれかわからなくなってしまった」男の、 笑いと涙の青春グラフィティ。

とりあえず感想を箇条書きで。

  • 初日遅れた割にはまぁまぁの完成度(まあ幕が開いて3週たってもぼろぼろじゃ困るが)。
  • 脚本的にはぼちぼち、かなぁ。悪くはないんだけど、「紙屋町さくらホテル」とかに比べると、「うぉお井上先生さすがだぜ!」みたいな感じではない。
  • 基本的に登場するのが善人のみなので安心して見られるけど人vs人の葛藤があんまりない。感情の矛先が「戦争への怒り」のみのベクトル一本に感じられて、群像劇としてはやや物足りなさもあり。
  • 時々、役者の演技が「客席を見てしゃべる」系の微妙に不自然な芝居になってるのが(演出だとは思うけど)どうにも気持ち悪い。
  • 梅沢昌代さんはいい役者だと思うが浅野ゆう子ともども30代前半という設定はちとキビしくないだろうか(笑いどころなのか判断に迷った)。
  • 川平慈英の正体は絶対に「本当はアメリカ人だけど記憶を無くしたのをいいことに日本に送り込まれた」のかと思ってたら全然違った。蔵さんがアメリカ人で慈英が日本人だなんてそんなバカな。
  • 川平慈英の役は再演時には森山未來がやるに違いない。タップシーンはサービスコーナーか。
  • 北村有起哉の演技は大倉孝二が取り憑いたようだった(北村さんは好きだがあの演技はどうなんだ)。
  • というか北村有起哉大倉孝二を足して二で割るとうちの旦那にちょっと似てないか、と思うと余計にあの芸風に複雑な気持ちに(顔かたちというよりたぶん骨格が似てるだけ)。