KUDAN Project「百人芝居◎真夜中の弥次さん喜多さん」@名古屋つるまいプラザ

というわけでそもそもの今回の旅のメインイベント。

いやあ、すごかったすごかった。
単純に脚本や芝居の完成度でいったらそりゃあ二人芝居バージョンのほうが高いとは思うのだけど、約160人の群舞の迫力といったら、それはもう単純に口をあけてぽかんとしてしまう。だって見たことないものそんなもの。舞台一面の障子にも笑ったし、それがバーンと開いた瞬間にも笑ったけど。なにより喜多さんの幻覚に弥次さんが入り込んでしまう瞬間は圧巻。約160人で作り出す幻覚シーンはナンセンスの極み。約160人が入り乱れて好き勝手なことをしているのだから、それを眺めてただひたすら途方にくれる弥次さんの気持ちに素直に共感。笑いながら頭を撃つ人々や頭に富士山を乗せた人や車いすの人やひげダンスの人や、なんかもう意味が分からない。これはもう、誰だって途方にくれちゃうよ。そしてただひたすら160人が歩き続けてるシーンなんかもすごかったけど。理屈でなく「永遠」を感じた。あれは。


しかし、それよりも思ったことといえば。私はもう本当にこの小熊ヒデジ&寺十吾演じる弥次さんと喜多さんが好きで好きでたまらないんだってことだった。オープニングでふたりが出てきた瞬間に、初演/再演のシアターグリーンで見たときと時空がつながってしまった。つまり、この世とあの世の狭間でこのふたりはずーっと伊勢に行けないまま「なぁ、どうする?」って延々と同じことを繰り返していて、そのうちの一瞬を切り取った場面が時々こうして上演されてるんだな、って、理屈でなくそう思ってしまったのだ。そして舞台が終わってもあの二人はずっとこの世でもあの世でもないどこかで「リアルじゃねぇやな」って言ってるんだ、って。
だから、いきなり喜多さんがいなくなってしまった時にひとりぼっちになってしまった弥次さんの姿が哀しくて哀しくて、オープニングでいきなり切なくなってしまった。ああ、ふたりは一緒にいないと駄目なんだよぅ。ひとりぼっちじゃ寂しすぎるよう。なんて。

いやあ、見に来た甲斐があったなぁ。