ミス・サイゴン

実は初見。話は知ってるし曲もほとんど聴いていたのでなんかもう見た気になっていたけれど、考えてみたら初演の時はまだ東京にいなかったしな……。

見終わった感想としては「……ひでぇ話だな(いろんな意味で)」という感じ。うーん、確かに悲劇として泣けるんだけど、なんかこう、ベトナム戦争の背景とかをロクに知らない今の世代の日本人には伝わらない部分が多すぎるんじゃないかと思った。アメリカでGIがどんな扱いを受けたかなんていう状況を知らない人間が見ても、単純に「クリスひでえじゃねえか!」としか思えないし。キムだって「なんで子供手放しちゃうの、それでいいの?」と思っちゃうしね。パンフレットで歴史的背景をちゃんと読み込む必要があるのかな、といいつつパンフ買ってない私。えへ。

さて別所エンジニアを見るつもりで来たら、怪我をしたとかで橋本エンジニアが代役。うわーーん、コンプリート計画が狂っちゃうよ! とはいえ、生き生きと楽しそうにエンジニアを演じる橋本さとしさんを見ていたら、なんだか感慨にふけってしまった。初めて私が見た、青山円形劇場の舞台でまだまだ二番手以下だったあの人が、10年たった今帝劇のセンターでソロを堂々と熱唱……。と思うとね。そりゃあ胸もあつくなるというものです。市村さんのエンジニアをまだ見ていないのでなんともいえないけれど、キャラにあってるのかな、物足りない感じはなかった。キム役の新妻聖子ちゃん、さすがに歌がうまい。やや薄味な感じなのでもうちょっと存在感あるといいかなーとは思うけど、初々しい感じとかはキム役にあってるんじゃなかろうか。後半の母親になってからの演技は、あの歳の女の子に多くを求めるのは難しいかなという気もする。クリス役のカズさん、終盤、血を吐くように「失敗した」と歌う場面でちょっと泣けた。クリスのひどい男っぷりをちょっと緩和してくれてよかった。ジョン役は岡さん。やっぱりこのカズオカコンビは「戦友」って感じがしていいな。バランス取れてる。ブイドイもさすがという感じ。

しかし東宝ミュージカルの罠というか、元マリウスのカズさんが元エポニーヌの新妻さんの最期を看取ろうとするシーン、どうしても背景に砦の幻が見えてしまう。いまにも「恵みの雨」を歌いだしそうで……なんていう話を友達にしていたら、「こないだはクリスが井上くんでキムが松さんでエレンが高橋さんだったから、モーツァルト!かと思いましたよ」とのこと。うはぁ。