小説版ガラスの仮面

チョコレートコスモス
チョコレートコスモス/恩田陸
「まだそっち側に行ってはいけない。そっち側に行ったら、二度と引き返せない。」幼い時から舞台に立ち、多大な人気と評価を手にしている若きベテラン・東響子は、奇妙な焦りと予感に揺れていた。伝説の映画プロデューサー・芹澤泰次郎が芝居を手がける。近々大々的なオーディションが行われるらしい。そんな噂を耳にしたからだった。同じ頃、旗揚げもしていない無名の学生劇団に、ひとりの少女が入団した。舞台経験などひとつもない彼女だったが、その天才的な演技は、次第に周囲を圧倒してゆく。稀代のストーリーテラー恩田陸が描く、めくるめく情熱のドラマ。演じる者だけが見ることのできるおそるべき世界が、いま目前にあらわれる!

ということで、まるでガラスの仮面だという評判を聞き付けて読んでみました。そのものズバリという感じですね。さすがに「中華料理屋に親子で住みこむ天才少女」とか「映画監督と大女優の娘で大邸宅のお嬢様」とかいう70年代な設定ではなく、平成の時代らしくそれなりにリアリティのある設定に落ち着いてますが。
しかし全体を通して、ここに来てるような演劇ファンにとってはあまりに身近すぎる題材や設定なので、ときどき同人誌的な気恥ずかしさも感じたり。「この稽古場はコクーンの稽古場だろうな」とか「この小松崎って演出家は野田秀樹そのまんまだな」とか「この中谷劇場って当然本多劇場だよね」とか「W大の劇研ってそのまんまやん!」とか「あーこの芝居って三谷のマトリョーショカだ」とか。きっと恩田さん相当な芝居好きなんですね。
話は「ふたりの天才少女が出会ってオーディションを通過したところ」で終わってしまうので「大予告編大会じゃねえか!」と思ってしまうけれど(続編出ないのかな)、「ふたりの王女」や「ヘレンケラー」のオーディションシーンのワクワク感は十分楽しめるかと。特に二次審査のお題はおなじみ「欲望という名の電車」だったり。
小説として面白いのかどうかはまったく冷静に判断できませんが、少なくともガラ亀好きには十分楽しめるのではないかと。